私は、今年7月で67歳になります。なので、初節句は66年前ということになります。そのときに祖母がお祝いに買ってくれたのが、この兜でした。ほんのわずかな額だった老齢福祉年金を貯めて、買ってくれたと聞いています。高さが15センチほどの、ほんとこじんまりした兜ですが、私にとっては年に一度飾る宝物です。

その祖母が60歳のときに私は生まれました。生きていれば127歳! ギネスものですね。

昨夜、しまい込んであったアルバムをふと開きまして、祖母の写真を見つけました。亡母の字で「母58歳」と書いてありました。当時のことですから、写真を撮るというんで正装で臨んだのでしょう。着物、草履のいで立ちです。美容院などはめったに行かなかったのか、髪はぼさぼさ、ノーメーク・・・これで58歳!ほんと老婆です。

58歳ということは、私が生まれる2年前、昭和29年のころ。私が生まれた田舎では、まだ、戦後復興の恩恵には浴していませんでした。戦火からはまぬがれていたものの、戦前の、資材が乏しかったころに建てられたバラックのような棟割長屋に住んでいました。水道なんてなくて、近くの井戸から水を汲み、下水道などもちろんなく、大人たちが「吸い込み」という穴を掘ってそこに排水を流し込んでいました。半世紀以上も前のことですが、いまでもはっきり記憶に残っています。