最近、次のようなネット配信記事を目にしました。
「認知症の疑いがある父親に3億円を寄付させたのは公序良俗に反し無効だとして、K医大と主治医に損害賠償を求め提訴した長女が27日、K市内で記者会見し『極めて異常で不当。第2、第3の被害者を出さないために提訴した』と語った。準詐欺容疑での刑事告発も検討していると説明した。
会見したのは、東証プライム市場に上場する機械メーカー「S工業」の社長だったSさん=2021年10月に90歳で死去=の長女Mさん(62)。今月26日、母親と妹と共に金沢地裁に提訴した。
Mさんによると、提訴前に調停を申し立てたが、K医大側が『寄付時に既に認知症だったという診断書がなければ、返還する理由がない』などと主張したため、不調に終わった。提訴に対し、K沢医大は『正当な手続きを経て寄付金を受け入れている』としている。
訴状によると、Sさんは21年1月、金沢医大病院に入院。MRI検査で大脳の萎縮などが確認された。その後、大学創立50年に合わせて実施された募金に応じる形で3億円を寄付した。」
ネットで調べた限り、S工業は、sさんが先代から引き継いで大企業へと育て上げたようです。娘さんたちにしてみれば、父親がそんな大金をK医科大へ寄付しなければ、その分相続財産が増えるわけで、「ふざけんな」というところなのでしょう。また、その氏名からみて、Sさんの息子さんか弟さんと思しき人がその会社の社長と会長になっております。そして、記事を読む限り、その人たちはこの訴訟には参加しておりません。だとしたら、Sさんは、会社の承継をきっちり済ませたうえで、現金や有価証券で保有していた自己の財産のうちの3億円を寄贈したということなのではないかと推察します。
人情として、「くやしい」というのはわかりますが、民法の大原則である「公序良俗」に反するということでの訴訟には無理があるような気がします。
昔、老子は、「子孫に美田は残すな」と説いたそうです。黙っていてもお金が入ってくるような財産を子孫に残すと、子孫はそれにたよってろくに働きもせず、ろくな人間にならない、したがって財産としての美田を買い、残すようなことはするなということを言ったものだそうです。
以上、子孫には何の資産も残せない初老男の戯言でした。