従来、相続によって所有権が移転したことによってその移転登記を行おうとする場合には、亡くなった被相続人の戸籍謄本その他必要書類を揃え、登記申請書の記載も平易ではないため、司法書士に依頼することが多く、当然、費用が掛かります。

その一方、この移転登記は、なぜか、義務ではありませんでした。したがって、相続した土地を担保にお金を借りるとかの必要性がない限り、登記は放置しておくかという心理が当然働くわけで、この結果、推定では、九州本島の面積に匹敵する土地が、所有者不明土地の扱いとなっているのだそうです。

それが、来年4月からは、「不動産を取得した相続人は、所有権を取得したことを知った日から3年以内に」相続登記をしなければならなくなりました。また、この義務違反には、10万円以下の過料を課せられることとなりました。遺産分割協議でもめていて相続が確定しない場合であっても、相続人の誰か一人が相続登記に代わる「相続人申告登記」をすることが求められるようになりました。

空き家の問題もまた深刻です。2018年の全国調査で空き家数は849万戸、7戸に1戸の割合になっていて、2030年には、6戸に1戸となるとも見込まれています。その約半数は、「住めない、貸せない、売れない」管理不全となっている物件で、自治体や近隣住民にとっては心配・迷惑な建物となっています。この問題への対応策として、「所有者不明土地管理人」制度が導入されました。市町村長による行政指導等とも相まって、少しずつ改善されることが期待されています。

ここで、私の経験談を少し申し述べます。新潟に住んでいた、子がいない一人暮らしの伯母が施設入所となったため、それまで住んでいた自宅はしっかり施錠して、空き家にいたしました。3年後、その伯母が亡くなり、公正証書遺言によって、私が財産の一切を相続しました。

ここで問題となりましたのが、その空き家をどうするかでした。地元の不動産業者の数社へ足を運びましたが、いずれも「貸家にするには老朽化しており、売るにしても更地にしてでなければ買い手は現れないだろう」との見解でした。隣近所の方からも、このまま空き家にはしておかないでほしいと要望されました。で、家屋は解体し、発生した廃棄物はすべて処分してもらいました。延べ床面積約40坪の家屋でしたが、その費用は200万円以上もかかってしまいました。幸い、葬儀費用等の支払いを済ませても、まだ、預貯金の残がありましたので、私の自腹は切らずに済みましたが、それでも、解体業者からの見積もり合わせや、取り壊し前の遺品の片付けなどなどで、たいへんな思いをいたしましたっけ。