20年前、母が75歳の頃、すでに認知症で要介護2か3に判定されておりました。

母は、50歳代で心筋梗塞に罹り、心臓が弱くなっていた身、もし亡くなって葬儀費用等が発生したときに、その費用を充てるための定期預金は、解約するのに手間がかかると聞いておりました。で、母をA信託銀行の窓口へ連れて行って定期預金口座を解約し、全額をB銀行の普通預金口座へ移し替えたことがありました。

挙動不審とまではいかなかったとは思いますが、同行した私に「何を書けばいいの?名前を書くの?どこに書くの?」、「これでいいのかい?」とかを大声で言い続けていました。でも行員からは、解約理由を尋ねられはしましたが、すんなり、移し替えができました。聞くところによれば、いまはこうはいかないようです。まず、定期預金の解約は、本人にその意思があるのか、しっかりと本人と対話し、その様子を観察するそうです。

「普通預金口座にしてあって、本人のキャッシュカードを使ってATMから引き下ろすのだから問題ないだろう」と思っている人はいませんか?

ある本を読んでおりまして、「え?」って認識を新たにしたのですが、                                               ①「通帳をなくしたから」と何度もその再発行の手続きをとるようになった。                                          ②ご本人と思しき人がATMの前で途方に暮れたようにしている。                                                ③いままでキャッシュカードを使っての預金引き落としはなかったのに、その家族と思しき人が本人のキャッシュカードを使ってお金をおろすことが、ひんぱんに起きるようになってきた(生体認証付きのATMであれば、もちろん、これはできませんが)。

金融機関による違いはあるかもしれませんが、このような形跡を行員自身の目でキャッチしたり、店内ビデオカメラで収録しながらAIで解析し、これはおかしいとなると、とりあえず引き下ろせなくして、窓口対応に切り替えるようになったそうです。

預貯金というのは、あくまでも債権ですから、民法等の条文に該当しない限り譲渡禁止(本人の預貯金は本人だけのものであって、他人へ譲渡はできない)です。そして、家族等による高齢者財産の使い込みや犯罪集団による詐欺被害などを防止する観点からも、金融機関は、厳格にかつ速やかに預金口座の凍結を行うようになったとのことです。

冒頭のような移し替えにおいて、今日の金融機関では、その高齢者が認知症では?と疑うことになれば、預金移し替え手続を即、ストップしてしまうことでしょう。そうなりましたら、いくら行員に向かって怒鳴ってみたところで、まったく無意味です。で、次のような対応が必要となってきます。

①認知症ではあるけれど、被後見人に該当するような「事理弁識能力に欠ける」状態ではないと抗弁するのなら、その旨の診断書を医師から入手して、金融機関へ提出して相談する。金融機関によっては、さらに別の書類を要求してくるかもしれません。「○○銀行ではそんな書類は求められていないぞ」などど抗議したところで、「当行といたしましては・・・」というそっけない言葉で応じてくることでしょう。                                                          ②被後見人に該当するケースであるなら、裁判所へ成年後見人審判の申し立て手続きを行うしかありません。

ATMで引き落としているから大丈夫だと高を括っていると、ある日突然「窓口へお越しください」という表示に面食らうことになるかもしれません。