マンションが老いていきます。現在、国内には約690万戸の分譲マンションがありますが、「築40年超以上」の老朽マンションが、20年後には430万戸に及ぶとの試算が国土交通省から示されています。

住民もまた老いていく一方です。分譲マンションの間取りの多くがせいぜい3LDKか3DK・・・2世帯で住むにはとても手狭ですから、お子さんが大きくなり結婚するとなると、そのたいていが転居して、あとに残るのは老夫婦という構図となります。

私はかつて3年ほど、同じ市内のマンションの管理人をしたことがありました。築20年になる50戸ほどの分譲マンションでした。相続でもめているらしくて空き家となっているところが1戸ありました。売りに出していて買い手がつかず、不動産業者所有のままのものも1戸ありました。住んでいたあと転居し、賃貸にした物件も1戸ありました。高齢者だけの世帯は、おぼろげな記憶では5,6戸、全戸数の約10%ありました。

あと十数年もたてば、このマンションも老朽マンションの仲間入りとなります。

当然、大規模改修を行わざるを得ない時がやってきます。外壁塗装、水回り、エレベータ・・・現行のマンション区分所有法では、その改修には所有者の4分の3以上の同意が必要となっています。毎月積み立てている修繕積立金でまかなえればとにかくとしまして、それ以上のお金の負担がかかわってくる場合には、これは容易なことではありません。とくに、住まずに貸している所有者には、なかなかインセンティブが働かないことでしょう。年金暮らしの高齢世帯も、改修の必要性は身に染みて分かっていても、「先立つものがない」ということで反対に回ることが起こることがじゅうぶん考えられます。

ましてや、建替え!現行法では所有者の5分の4以上の同意が必要となっています。建替えには、工事中の住民の転居費用を含め、莫大なコストがかかります。建替えによって戸数を増やし、その売却益によって総費用がまかなえるといったような好立地でない限り、建替えは困難を極めることでしょう。

いま、国の法制審議会では、多数決の割合基準を例えば建替えの場合、5分の4以上→4分の3以上 にするとかの法改正に向けた議論が行われているようです。しかし、極端な話、仮に過半数で決めることができるようにしたとして、建替え反対を表明した人を強制退去させることなどありえません。おそらく次善の策として、反対者の多くが買取り請求をしてくるでしょうから、管理組合側が買い取っていかなければなりません。その費用は、当然、建替え費用に跳ね返ってきます。

1戸建てには管理不全の空き家が目立ち、はたまた、建替えできない老朽化したマンションも増えていく。これからの日本は、そんな街風景となっていくのではないでしょうか・・・