2020年の国勢調査によれば、65歳以上の高齢者世帯のうち、ひとり暮らしは671万世帯に上っているそうです(ちなみに、直近の人口推計では、65歳以上の高齢者の人数は、私もその中に含まれますが、3,623万人だそうで、サブローニーサン⦅三郎兄さん⦆とでも文字って覚えておきます)。

もちろん、ひとり暮らしであっても、ふだん、行き来があったり、いざというときには駆け付けてくれる家族や親族がいれば安心です。その場合は、個≠孤です。しかし、中には、死に別れて、あるいは、何らかの事情で連絡を絶ったり絶たれたりして、頼れる人がまったくいなくなってしまった「孤」暮らしの方もいらっしゃいます。ある新聞の社説に書いてあったのですが、2021年度、自治体火葬が約4.8万件あったそうです。そのほとんどが、身元が判明し親族と連絡がついたものの、引き取りを拒否されて、やむなく講じられた措置だったそうです。

さて、世の中、この問題に対応する「身元保証等高齢者サポート事業」を運営する人たちがいます。福祉事業ではなくて営利ビジネスとして参入している人たちです。

買い物支援などの日常生活支援、入院や入所時の身元保証、さらには、遺体引き取りや火葬手続などの「死後事務」・・・これらの一部かすべてをパッケージで請け負うというものです。

そのほとんどが、そのサービスを希望する高齢者との契約時、100万円とかのかなり高額な預託金を求められているようです。

7年前になりますが、身寄りのない高齢者の支援をうたう公益財団法人「日本ライフ協会」が、高齢者から将来の葬儀代などとして集めた預託金のうち、約2億7400万円を着服するという事件がありました。何に使っていたかというと、代表自らと息子の専務理事への多額な役員報酬や、住んでいた東京都心の高層マンションの家賃が主だったそうです。

この法人は結局解散し、契約した多くの高齢者たちが損害を被りました。ある男性(73歳)は、「頼れる身内がいないので、病気になったときに助けてもらいたいと思って2015年春に加入したばかりでした。ようやく精神的にラクになったと思ったら、こんなことに……。貯金のほとんどを費やしてしまったので、もう他に頼めるお金もありません」。高齢者を喰い物にする許すべからざる輩です。彼らのその後はどうなったのでしょうか?当然、損害賠償請求訴訟とか起こされたことと思いますが、彼らに返済にあてる財産がなければ、それまでです。

この事件から7年経ちました。このサポート事業へのニーズがいっそう高まっている中で、いまもなお、監督官庁や業界団体が存在しない状況が続いているために、サービスの内容や費用の水準がばらばら、実態も不透明なままなのだそうです。